第4章 図式 

行動や運動も知覚活動と同じく、空間的・時間的連続性に依存する活動である。行動や運動は、行えば必ず物理的に外の世界を変化させる。知覚活動は、行ったとしてもそれだけでは、外の世界への変化をもたらすものではない。

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行動の循環
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知覚の循環

「定義」

知覚活動が世界を変化させなくても、知覚活動の主体者は世界から影響を受け、変化する。変化するものというのは、知覚循環に存在する、知覚のためのツールである「図式」である。「図式」は、その個人特有のものであって、その人の持つ遺伝子を基盤に、生きてきた歴史によって唯一のものに構成されている。

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現在の図式は、過去からの積み重ねによって、唯一無二の構成になっている。

「機能的アナロジー」

図式の持つ役割とは

① プログラムを設定する時の「書式」のように、情報をある決まった法則で受け取る。法則に当てはまり、受け取られた情報は処理するが、法則と異なっていれば無視してしまう。
② 次の身体的活動を準備し、行動に移すプランを作る。

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図式によって、ボールの刺激情報を知覚する。
ボールが活動しているという刺激情報を知覚し、ボールが次に移動する方向を予測し眼球をはじめとして、自身の身体の活動をプランする。

選択的注意とは

世界には多くの情刺激報が飛び交っている。その中から、種の本能と、個人の経験・その経験によって築き上げられた興味によって、注意が方向付けられます。

図式の構成変容について

個体には、本能や遺伝情報によって、注意を向けるべき、大まかな方向が決まっている。よって、その方向に沿って「図式」は修正され、変容していく。

「図式」と「情報」

知覚を行うためには、自身の持つ「図式」によって、「情報」を抽出する。または、受け取らなければならない。知覚を行うためには、自身の持つ「図式」によって、「情報」を探索する。そして、取り出さなければならない。

「枠組」

ミンスキーの枠組(フレーム)理論

過去の経験から、状況や対象の「枠組」を作り上げて、新しい状況や対象を知覚する。その「枠組」は、各個人の経験に依存する。
(例示)車を運転する際、乗りなれている人は、車の操作に関して、基礎的な「枠組」から車種固有の「枠組」まで豊富に準備できているので、ある程度の車を乗りこなす。
基礎的な枠組:ハンドルの形・大きさ・重さ・クラッチ(左)・ブレーキ(真中)・アクセル(右)・(ATの場合)ブレーキ(左)・(ATの場合)アクセル(右)などなど…
豊富になった枠組:左ハンドルの操作・ブレーキの聞き具合・アクセルの踏み込み具合
全ての状況・対象を1から知覚していくのではなく、経験から作り上げられた「枠組」に当てはめて知覚する。

ゴフマンの枠組(フレイム)理論

「フレイム」とは、状況を理解し、その中でとるべき行動を認知したりする枠組のことである。
「基礎的フレイム」とは、ある集団の枠組み内での、信念体系。世界観・宇宙観。
日常的状況は、基礎的フレームから派生したり、変形したものである。今この場所で起こっている状況が何かということを知覚するための基礎となっている。
演劇というものを知覚する際には、壇上で起こっている事をそのまま知覚するのではなく、ある状況の枠組を演じていることを理解した上で、その内容について知覚する。
ミンスキーは、人工知能開発における理科的な科学的対場で「枠組理論」を提唱し、ゴフマンは、人間科学的な立場で「枠組理論」を提唱した。
どちらもU・ナイサーの言うところの図式を用いた知覚理論と同様に、枠組(フレーム/フレイム)によって、状況や対象を知覚・認知するといった理論を展開してきた。

「情報抽出と情報の保存」

情報の伝達

情報が伝達されるということについて、以下の図を参照してもらいたい。

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< AさんからBさんに情報伝達がなされる。 >

Aさんが怒りを表す事によって、Bさんが恐れを表す。

< CさんはBさんの情報からAさんについてのより詳細な情報を知覚することができる。 >

Cさんにとっては、Aさんから直接的に情報が入ってこなくても、Bさんのから受け取る事のできる情報に よって、Aさんの情報を受け取る事ができる。
ノイズについて…AさんからBさんへ、BさんからAさんへと情報の伝達が行われている間に、その情報内容は少しずつノイズが加わり、変容している。

情報の保存

図式でもって抽出(受容)した情報は、伝達された時点で、保存されたということにもなる。
現在の図式は、過去に情報を保存を行った時の図式とは異なる。しかし、保存された情報< 記憶 >を想起する際には、過去の図式が同時に想起されることによって、思い出すことができる。
現在持つ最新の図式が存在するからといって、過去の図式を持ち出すことは特殊なことではない。

「知覚循環の発生」

人間は生まれた時から、知覚循環をスタートさせるための最低限の図式を持っている。その根拠として、生まれて間もないの赤ん坊が、音の鳴る方向に目を向けるということがある。しかも、その目を向ける方向は、ほとんど正間違う事がないようである。これは、右耳と左耳に到達する音のわずかな時間差から、音の方向を割り出す「知覚の図式」を持っているからであろう。しかもそれは右耳と左耳の距離は何mmであり、音源は何ヘルツで方位○○の何m先から聞こえてくるものであるかと複雑に考える必要はなく、頭を度の程度傾ければ音が両耳に同時に到達するかある程度の試行錯誤により調節しているのである。

発達心理学者のピアジェが多くの研究結果を残しているので、以下を参照して下さい。

ピアジェの発達段階

感覚運動的段階 …出生より一歳半又は二歳ころまで。
ある感覚情報を得たら、このように反応・運動・動作をする。ということを身に付けていく段階
Ⅰ段階:反射活動
Ⅱ段階:手を用いて何かをすることを確立
Ⅲ段階:移動手段(ハイハイ)等の動作の確立
Ⅳ段階:Ⅱ・Ⅲ段階を強調させつつ、目的手段関係において、使いこなす。
(指しゃぶり…指を口に意識的に近づける。)
Ⅴ段階:動作系が柔軟になり、試行錯誤的に新しい手段の発見が可能になる。
Ⅵ段階:動作的に予期や洞察行動を示しうるようになる。すなわち、感覚運動的知能が一応成立するまでの時期。
動作的に予期…走る車がトンネルに入ると次に出てくるであろうがわかる。
感覚運動的段階では意思や意図により行動を起こすのではなく、模倣と反射によりなされる。
表象的思考段階…2歳 ~ 頭の中でイメージして考えていく。
前操作的(自己中心的)段階…1歳半から2歳 ~ 7・8歳
イメージなどが論理的に操作できない。その子の持っているイメージでしか理解することができない。準備段階。
象徴的思考…1歳半から2歳 ~ 4歳
イメージを思い浮かべない、勘、条件反射で行動をとる。言葉記号の組織的獲得が急激に前進する。モノを言葉で置き換えられるようになる。
直感的思考…4歳 ~ 7・8歳
概念化がすすむ。イメージを思い浮かべた勘。そのときの推理や判断がその子だけの共通点でのみ結び付けてしまう。
操作的段階…7・8歳 ~
物事を条件に合わせて判断できる。頭の中での表象の操作が可能になる。勘に頼りきった思考ではない。
具体的操作…7・8歳 ~ 11・12歳まで
頭の中でイメージできるが、具体的に見えるもの、扱えるものでしか考えられない。類(クラス)と関係(系列)についての思考の枠組みができ、さらに数についての理解が成立する。人間という類は哺乳類という系列にまとめられる。おはじきを使って、和や差ができる。
> 具体的操作段階の子どももある程度は現実の束縛を受けるため、形式操作段階にはいけない。

- 具体的で目に見えるものしか扱えない。

- 経験したことでないと考えられない。

- 自分の愛憎などの感情が絡んでしまう。

具体的操作では、現実の束縛を受けるため、それが適用される対象や領域の違いによって、同じ操作が困難であったり、容易であったりする。
ピアジェは、こうした論理的思考操作の体系を「群生体」と呼び、その成立が、子どもの認識の発達過程の上においてきわめて重要であることを強調している。
形式的操作段階…11・12歳~ イメージだけの抽象的思考が可能になる。可能性による推論が可能になる。
帰納的思考は勘のレベルでやっていることを思考のレベルに置き換えただけ。個々の経験から法則性・一般的命題を導き出す。
演繹的思考は既にある命題から個々の事例が当てはまるかどうか判断したり、さらにそれが正しいかどうか検証する。
発達の最近接領域…現実の発達水準と潜在的な発達水準(大人や、仲間の援助がある場合に、子どもが問題を解決できるようになる水準)の2つのずれの部分。
例:精神年齢が7歳の2人の子どもがいる1人は回答の例示を受けたり、回答が引き出しやすいように援助を受け現実の発達水準よりも2歳年上の成績を示したが、もう一方の子どもは、そうした援助を受けなかったため、現実の発達水準のままであったとする。この2人の違いが発達の最近接領域を具体的に示している。難しすぎる問題でもだめ、簡単すぎる問題でもだめ、ちょうどやってみよう、もう少しでやれそうだという状態。

「意味と範疇化」

アフォーダンスとは… -J・J・ギブソン-
外界のあらゆる事物は、知覚できる刺激情報の中に意味を含んでいる。その事物自体が発する光の反射や、音圧といった刺激情報には意味などないという意見もあるが、下記の図では、傘=雨の日に差し、身体を濡れないようにする道具という意味が、傘の詳細な刺激情報よりも早くは知覚される。刺激情報自体に意味が含まれているからではないか。

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範疇(カテゴリー)化による知覚

人間はそれぞれ独自の図式を持つ。よって、外界の一つの対象…例えば「イス」というものをどのように知覚するかは、個人それぞれの図式によって異なる。「家具」のカテゴリーの中にある「イス」と知覚する人もいれば、「部屋」のカテゴリーの「イス」と知覚する人もいるあであろう。意識していなくとも、カテゴリー化する事によって、消費エネルギーを抑えて、知覚するという認知構造を主張する者もいる。ただ、そのカテゴリーには個体差がある。

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対象「木のイス」を知覚するための個々の図式

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